県リーグという土俵
エピソード3 県リーグ
辰たちの代が県中準決勝で相まみえた相手が国見だった。当時の国見は1部の下位に沈んでいた。しかも次年度は部員不足で地域リーグへ降格することも決まっていた。
同じ1部所属の海星を破って勝ち上がった西中に勢いはあると思っていた。
ところが、である。せっかく舞台は芝のピッチとなったものの、西中は疲労困憊。
かたや国見はたんたんとしていた。それもそのはず。県リーグは1試合40ハーフの80分。実に夏の中総体よりトータル20分も長い真剣勝負を、日常的にこなしていた。試合体力の差は歴然だった。
そもそもカテゴリーが2段階も違う相手が南山であり、海星であり、国見だった。練習試合すら全くしたことがない1部軍団。飄々とボールを回す国見になすすべなく負けた時、県リーグの重要性を痛感したものだった。
そして、時は経ち。我が西中も県リーグ2部に昇格して6年目かな?ご存知の通り凸凹フレンズの代は1部の入替戦に進んだこともある。そして昨年度は現中3が新チームになりたての頃、自力で残留を果たしていた。ここが、大きかったんだ。同じ土俵に立っていることで、肌感覚で相手をつかんでいるのが今の西中だ。
今大会の初戦の2回戦。なかなか点が入らずハーフタイムを迎えた。相手陣営の保護者の会話が聞こえた。
なかなか点が入らんで相手は焦るかもね。こんな所でまけられんやろうし。
そうなんだ。不思議と県リーグ勢をリスペクトしすぎるんだ。そして攻め急いでくる。準決勝の相手も同じだった。名前勝ちをした余力が今回の西中にはあった。本人たちにそんな偉ぶった感はないのもいい!
果たして決勝は名門復活を期する国見。あの9年前の降格以来もがいていたが、県リーグ2部に上がって2年目。目下首位で1部昇格に手をかけている。伸び盛りの好チームだった。西中はリーグ2部前期では、0-2の負けを喫していた。が、それでも、普段やってる相手の1つだ。1部の南山に勝った西中が恐れることは何もない。かくして、実力を十分に出し切った西中は勝利。しかも無失点での優勝。じつにしたたかで、じつにタフなチームに見えた。
祝福の握手を交わした保護者の一人が私に言った。
先輩たちのおかげです。
いや、本当にそうなんです。この県リーグの舞台が西中を真の強豪に押し上げたんです。先輩たちが積み上げた歴史は大きいと思っています。